2001.7.31
YANO Academy
『授業に参加することは、矢野先生に出会うこと。
そして、日本の文化を外から見ること。』
全8回の低価格コースから始められることでも人気の『矢野アカデミー日本語教師養成講座』。ちょっとお堅い名前だけれど、実際の授業は先生のユーモアたっぷりの話で盛り上がる教室に潜入!
★日本語を教えるのなら「文化」を意識しなくてはだめ!これが矢野流日本語伝授法。
「こんにちはございます」とはなぜ言わない? 「私」を英語で何と言う?
<矢野先生プロフィール>
もともと日本でサラリーマンをしていた。脱サラして日本語教師になった後、旅行で訪れたカナダに一目惚れ。企業移民として家族と一緒にバンクーバーに移り住み、1995年にYANO
Academyがスタート。現在、SFU(Simon Fraser University)の日本語講師でもある。かなり波瀾万丈な人生を歩まれている。
−企業移民とは、ずいぶん思い切った決断をされたのですね。でも、始めは日本語そのものを教える学校だったのですか?
「そう、カナダに住む日本人以外の人たちに日本語を教え始めたところ、『私も日本語を教えてみたいのですが、そんな学校はないのですか。』なんていうこと聞かれるようになってね。それで、日本語教師を養成するコースをスタートさせたのです。」
−日本語を教える難しさ、楽しさはどんなところにあるのでしょう?
(ここで矢野先生より、日本語に関する問題を出されました。)
「では、なんで『おはようございます』とは言うのに、『こんにちはございます』とは言わないのか?居酒屋で夜にバイトしている人は、なぜ夜でも「おはようございます」と仲間にあいさつするのか?どうしてかと外国人の人に聞かれたらどうやって答えますか?」
−え、習慣なので・・・。
「そうそう。そんなの日本人は無意識になっているけれども、すごくそこに何かがある。その何かって言うのが日本の文化なんです。言葉にとって、文化っていうのはものすごく大事なんです。特に日本語を教えるのなら文化を意識しなくてはだめ。でないと教えられないですから。日本人が無意識のうちに身に付けてしまったものを、あらためて学んで伝えられるようになる。そこが難しくもあり、楽しいところです。」
−なるほど。私も日本人として興味深いテーマです。
「だからね、誰かに日本語を教えるためというよりも、教養として学びたいと考えている人が、特に日本を離れてカナダに暮らす移住者の方なんかに多いわけですよ。」
これまでの受講生約520人のうち、8割近くが留学などを目的としてカナダに来た学生ビザやワーホリの人たち。残りの人はもうカナダに移住している人たち。ほとんどのみなさんが、まずは教師になるという目的よりも、日本語そのものに興味をもって受講しているとのこと。
「では次の問題。英語で「私」「彼」「彼女」は何という?」
−I(アイ)、He(ヒー)、She(シー)です。
「エライね〜。でも本当は英語に「私」「彼」「彼女」っていう言葉はないんです(笑)。「私が(は)」「彼が(は)」「彼女が(は)」と言われたら、I、He、She、でもいいですけどね。「私の」と言えばMyが来るように、日本語は英語とは根本的に違う、「私」という日本語だけでは適当な英単語はないんです。日本語では、「私」の後ろに来る助詞(膠着語)に、文章全体に意味を持たせる大きな役割があるのです。」
なるほど。思い切りひっかけられてしまいました。これから矢野先生に会うみなさん、ひっかからないように気を付けてくださいねー。それにしても、自分の言葉のことは案外知らないものなんですね。
★生徒のみなさんにインタビュー!「日本語」を学び始めた理由。授業を通じて発見したこと。
ナナエさん
受講のきっかけ・・・カナダ人のご主人との間に生まれた息子さん(8才)は日本語より英語の方が得意。でも本人は学びたがっているので、きちんとした説明で日本語を教えてあげたい。
−日本語を学ぶことを通して、どんなことを感じましたか?
「日本人らしさをやっぱりとっておきたい。日本を誉めたい。私はカナダに永住する予定ではいますが、今すごく日本が恋しくて、愛しいです。日本の今のファッションとか、社会とかはすごく様変わりしていますけど、根本では同じだと思うので、だから自分の誇りでもあるんじゃないかと思います。それをすごく大事にしたいし、息子にも受け継いでもらいたいと思います。」
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ジュンコさん
受講のきっかけ・・・カナダへ来て、ボランティアで日本語を教える機会があったのだけど、なかなか上手く教えられなかったので勉強しようと思った。
−受講してみて、自分に何か変化はありましたか?
「日本が逆に好きになった。短い間しかカナダにいない私の友達とかが、こっちの気楽な生活の方がすごく良く思えたり、日本はしがらみばっかりだから絶対に帰りたくないとか言うのもわかるんだけど、授業の中で日本語を勉強しながら、日本の文化って、そういえばこうだなあって思ったりしていると、北米の文化ばかりがいいわけではなくて、日本は日本の味があって『私はもう、日本人で行くぞ!』って思うようになりました。」
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ケイコさん
受講のきっかけ・・・日本で英語の家庭教師をしていた時も楽しかった。カナダへ来たので日本語を教えてみたくなった。
−英語と日本語、いろんな違いがあるとは思いますが、日本語には特にどのような特徴があると思いますか?
「先生がある時「アイが無くても結婚している。」という例を話してくれたのですけれども、つまり主語がなくなると、英語は一つの文ではなくなるけれども、日本語だとアイ(=主語)が無くなって、ただ「結婚しています。」とか言っても文が成り立つんですよね。でも、「私が結婚しています。」とか「私は結婚しています。」というように、助詞の変化によって意味も変わってくるんですよ。この助詞のことを先生は「のり」と呼んでいて、主語と動詞の間にある「しがらみ」を表現しているんですって。なんだかとても日本らしくて、言葉と文化が密接な関係だというのを強く思いました。」
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★文化が行き交う街、バンクーバーは日本語を学ぶのに恵まれた環境。
−言葉が文化であるというお話、よくわかりました。また、生徒さんの感想を聞いても、海外にいるからこそ日本語を通じて日本の文化を考えるのは、本当に良い機会だと思います。
「そうなんですよ。ワーホリや留学生の人たちは、興味があるということでまず基礎編の8回コースを受講しますが、それを受講したからと言って、必ず先生になるわけでもないし、なりたいと思ってもすぐに先生になれるわけではないですよね。でも日本語を教えるきっかけにはなるのだと思います。」
−実際に日本語を教えるとなった場合、何が大切なのでしょう?
「日本語に限ったことではないですが、経験を積むことが一番大切です。その意味で、バンクーバーは恵まれた環境ですよ。日本語熱が高いのでね。」
−日本語熱が高いという背景には、どんな理由があるのですか?
「まずカナダの中で日本に一番近い場所に位置しているために、比較的日本の企業が多い。だから日本語が出来るということがビジネスチャンスに繋がるのですね。もうひとつ、バンクーバーは日本語能力試験(英語で言うTOEFLなどのようなもの)を受験できる場所であること(4年前にトロントでも受験可能になるまでは、カナダ国内ではバンクーバーだけだった)。」
−つまり、実戦経験を積める場所が豊富にあると言うことですね。
「そう。それにね、様々な国の文化で形成されるマルチカルチャーのバンクーバーなら、他の国の文化に出会うことも多いでしょう。自分の国、日本の文化を見直そうと思う刺激にあふれているんですよ。」
−では最後に、先生の夢を聞かせてください。
「始めはカナダ移住というのが夢でしたがそれが叶いました。次は日本語教師として、このバンクバーに正しい日本語が日本の文化と一緒に一人でも多くの人に広まっていくことが夢ですかねえ。今はインターネットやなんかで、地球がどんどん狭くなっていますよね。いろんな言葉が飛び交うコミュニケーションの中で、日本語も入ってコミュニケーションの輪が広がればいいなと思います。」
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矢野先生の経験がたっぷり生かされた手作り教科書で授業が進む。 |
ナナエさんの横では息子さんがお母さんの頑張りを見守ります。 |
卒業生の松下さんは、これから先生として活躍することになります。 |
★最後に!矢野先生を表現するキーワード集
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生徒、卒業生のみなさんに聞きました!「矢野先生って、どんな人?」
人間味がある。寛大。おもしろい。おちゃめ。お父さん。
距離が近い存在。情に厚い。
先生の人生経験を通して、いろんなことを学べる。
親代わり。授業中のプレッシャーがない。
授業がわかりやすい。私にも夢をくれた。
先生の夢を分けてくれる。
あきらめないでがんばれ、大丈夫だ!って言ってくれる。
強運の持ち主。
日本語を学ぶだけではなくて、人生の捉え方とかそういうのも垣間見ることができる。
アットホーム。普通に話せる。
なんて言ったらいいんでしょうね・・・、うーん、オヤジ?(笑) |
<取材後記>
レポートの中には書かなかったのですが、この学校の生徒さん、クラスメイトになった人同士、卒業後も大変に仲良しなのだそうです。中には日本に戻られた方もたくさんいて、日本全国にちらばっていながらも、時々同窓会を開いたという報告が矢野先生の元にも届くとか。
そんな話を目を細めながら話す矢野先生は、確かにみんなのお父さんのようでした。教室の壁にも、愛する卒業生全員の写真がズラリと並べられています。そんな人柄に惹かれてコースを受講する生徒は、ほとんどが口コミでやってくるそうです。
料金も手頃で短期から受講ができるので、何か習い事を始めてみたい人や、新しい出会いが欲しい人、そしてもちろん「日本語を教える」ことに少しでも興味があるの人には、ぜひお勧めの講座です。日本語教師としての知識だけでなく、日本文化と異文化に対する視野がきっと広がるのではないでしょうか?
レポート Jpcanada.com取材班(Shinobu/Aya)
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