2003.12.26
BCIT, British Columbia Institute of technology
『留学生プログラムから本科ディプロマを目指す!』
BC州が誇るBCITは、大学と専門学校の要素を併せ持つ、大規模な公立の職業訓練校。大学と同様Bachelor(学士)の資格も取れます。今回はバーナビ−にある広大なキャンパスで、留学生用ビジネスプログラムを中心に取材しました。
★BCIT留学生プログラムで段階的に勉強して本科へ進学。
(Dorisさん:生徒/中国からの留学生。BMS:Business
Management Study受講中)
-カナダにはどのくらい滞在していますか。留学の目的は。
「カナダに来てもう1年になります。カナダには大学に行くために来ましたが、BCITは大学の中でも最高の学校だから、他の学校は考えませんでした。両親の友人もここにいるし、カナダは勉強するのに快適なところです。」
-クラスメイトと先生について、教えてください。
「クラスメイトは多国籍で、例えば中国、台湾、ブラジル、ドイツ、イランなど、国籍が多様です。事例研究の時は違った意見が出るのは、とても良い経験になっていると思います。時々議論もするけど、それも良いのではないかしら。『組織行動論』のTracyという先生が特に好きです。授業にアクティビティが盛り込まれているので、それがとても記憶に残るのだと思います。」
-本科のプログラムへ、進学しますか。
「もちろん!ファイナンシャルマネジメントのディプロマ(2年・フルタイム)を取りたいと思っています。会計はビジネスの基礎と聞いているわ。数学の先生が、金融や会計の基本になるから、これが解からないとビジネスのキャリアを積むことは難しいと言っていたの。」
-英語が堪能ですが、母国ではどのように英語を勉強しましたか。
「中国では私立の学校に通っていました。カナダではまず、BCITと提携関係にあるESLの学校で英語を学び、そこからBCITに移りました。」
★BCITの指導方針は『実践的』。
(Augustus先生:Introduction
to business と、マネジメントも教えています。)
−先生の経歴を教えてください。
「ずいぶん前になりますが、BCITで留学生としてホテルマネジメントとビジネスを学びました。その後バンクーバーの幾つかのホテルでマネージャーをしていましたが、1979年に職業訓練の仕事に就き、米国とカナダ両方の機関と提携しながら若い人たちに教育をしてきました。BCITで教え始めたのは2年前。30年前、私自身がここで学び、BCITの良さを知っていますから、ここに戻ってきて教えるのはとても光栄です。」
−先生が思うBCITの特徴をあげてください。
「BCITの特徴は指導方針にあると思います。BCITでは教科書を読むだけではなく、業界のプロから実際に経験を積むことが出来るのです。とてもプロフェッショナルで、講師は大学から出たばかりの人達ではなく、業界の人間です。私自身もBCITで学んでいる間、多くの経験を積みました。若い人たちは働いた経験がないから、講師が業界で働いた経験があり、その知識を実践的な経験として生徒と共有出来る点は大事です。教科書から理論を用いることにより、生徒は重ねて知識を学ぶことができます。」
−現在教えているクラスの生徒達の国籍を教えてください。
「中国、台湾、日本、韓国といったアジア圏の生徒が多いですが、南アメリカ、トルコ、ロシアの生徒達もいます。1クラスの人数は23−24人で、4分の3は女性です。」
-現在教えている内容を教えてください。
「昨日はTELUS(電話会社)に出かけて、副社長に会ってきました。生徒達はクラスで話し合い、本を読み、問題と取り組んだ。あとは、実践です。私は時間割を調整して、実際に生徒達が校外で業界人と質疑応答できる時間を設けました。『マネージャーの仕事について』『文化について』『どんな問題点がありますか』といった質問をして、1時間ほど体験を分かち合った。これは非常に大切なことです。私は実際的なことに重点を置いているから、これらの実地見学をあえてカリキュラムに追加しています。理論と現実が合わさったものが必要だと感じるからです。」
−教科書は使いますか。
「マネジメントのテキストブックを使っています。その中には多くの事例研究(ケーススタディ)と筋書き(シナリオ)が載っていますので、生徒はそれをプレゼンテーションに活用します。先週は会社の構造について、プレゼンテーションがありました。」
-生徒は社員、マネージャー、CEOのどの立場で考えるのでしょう?
「私が彼らに話すときはいつも、君達は将来の若いマネージャーだと言います。一夜でCEOにはなれませんから、現場マネジメントからです。彼らのほとんどは、金融マネジメントや国際貿易の分野に興味があり、人事マネジメントとマーケティングも人気があります。」
-彼らは、BCITの本科のプログラムを目指しているのですか。
「ええ、彼らはとても野心的です。私は教師だから、生徒にとって一番近い距離に居る。だから私に本科のプログラムについて具体的に質問してきます。私はそれを調べて生徒に説明しますが、分からない点はHarbやAndreaといったオフィスのスタッフと話すことを薦めます。」
-宿題はどのくらい出ますか。
「僕のクラスは週に一度だから、事例研究(ケーススタディ)を宿題に出します。一つの事例に関して3つの設問があります。case
study analysisと呼ばれる標準の形式があるので、生徒は青写真に沿って宿題を進めます。これは個人の課題ですが、グループでやるものもあります。」
−生徒の英語力はどうですか。
「彼らにとっては大変です。私は授業をゆっくり進め、説明する時間を設けます。生徒によっては「質問しない」文化を持つから、私はそこを理解し、生徒達がみな質問するように努めます。でも彼らは英語が母国語でないのに、とても良くやっていると思いますよ。」
★筆記能力はアカデミック英語の基本です。
(Daniel先生:COMM0071という一番低いレベルと、COMM0004という上から2番目に高度なレベルを教えています。)
-先生の教師歴を教えてください。
「大学を終えてから、主に秋田県の中学で英語を教え、カナダに戻ってから私立のESLで3-4年教えたあと、BCITのPre-Entryプログラムで英語を教えています。」
-私立の語学学校でも教えた経験があるのですね。公立と比較してどうでしょう。
「私立の語学学校では、勉強とエンターテイメントが一体化していると感じますが、BCITはカリキュラムに焦点を当てていて、コースを終えられるかどうかは、生徒の努力次第。卒業できる可能性は大いにあるけど、卒業できない可能性も大いにあるんだ。その点でBCITは私立よりプロフェッショナルだと思うね。」
-能力の足りない生徒を、簡単には上のレベルへ送らないということですね。
「ええ、私立の似たようなプログラムに比べて、厳しいです。BCITではお金を払ったからといって、勉強しない生徒に甘くはありません。勉強することは生徒の責任です。厳しい理由の一つに、私立の学校よりも選択肢があることが挙げられます。本科に進学したら、カナダ人と肩を並べて勉強できるのだからね。」
-内容は、アカデミックですか、それとも会話などが含まれるのでしょうか。
「学問関連のプレゼンテーションを行いますから、会話の要素はどのレベルでもありますが、焦点は筆記能力。そして様々な概念の学問的文書を応用できる能力です。クラスでディスカッションをし、それを筆記スキルに活かします。時々文法とも取り組まなくてはなりません。」
-宿題はたくさん出しますか。
「時々出します。最も重要なことはクラスでやるから、宿題は、読んで概念を学ぶ、文法に焦点を当てる、ウェブサイトを閲覧する、といったことです。クラスでの最も重要な課題は筆記で、筆記能力がどれだけ発達しているかで、僕はその生徒が上のレベルに行けるかを見ます。」
★学校と授業の風景
★BCITの留学生プログラムは単位を本科に移すことが可能。
((Harbさん:International
Student Administrator:質問に丁寧に答えてくださいました。)
−BCITでは全てのプログラムで、留学生を受け入れていますか。
「本科のフルタイムプログラムを取りたい留学生は、まず私達に相談していただくのが一番です。プログラムによっては、留学生が入学するのが非常に難しいものがあります。というのも、カナダ人学生がBCITに期待するレベルがとても高いのです。」
−実際に留学生がBCIT本科に入学する方法は、複雑でわかりにくいですが。
「入りたいプログラム毎に取るべき道順が違ってきますから、まず一般的な情報を生徒に話し、必要であれば1対1で、生徒の希望するプログラムに必要なコースと学力をはじき出します。ほとんどの場合、生徒の状況は一人一人違いますからね。」
−日本にいたら来校は難しいですが、サーティフィケイトは、海外から申し込みをする生徒にお勧めですか。
「ええ、インテリアデザインプログラムには、常に日本人の生徒が数人学んでいます。BMSプログラムは、本科のビジネスコースへ進学を目指す生徒にお勧めします。BMSで取得したクレジットを本科のディプロマプログラムへ移すことができるからです。でも、例えば林業や建築など他の分野を学びたい生徒には、BMSはお勧めできません。
BCITは、ESLスクールのように英語のコース(COMM)もあります。TOEFLやIELTSといった試験の得点がまだ無い生徒には、EPP(English
for Polytechnic Program)をお勧めします。英語力がある生徒さんは、BCITのBMSかCOMMに直接入学することができますが、英語力がまだそれほど無い生徒さんは、EPPを終えてからBCITで行われているプログラムに進むのが最適です。」
−ABPプログラムに関しては、外部のESLと提携しているそうですが。
「ええ、ABP(Academic Business Program)の英語力要求基準はBMSよりも低いので、まずABPプログラムの1学期目を提携ESL校で取り、そのあとBCITキャンパスで、BMSプログラムの1学期を取ることができます。ABPプログラムは、BMSの準備プログラムと言えます。ABPプログラムの2学期は、BMSプログラムの2学期と同じ内容です。これならABPとBMSの2つのサーティフィケイトを取ることができます。」
−ABPの1学期目は提携校で開催されますが、申し込みはBCITへして良いのですか。
「ええ、ABPもEPPも、BCITへ申し込みをしてください。」
−全ての生徒がBCITの入学試験を受けなくてはいけませんか?
「BCITには幾つかの試験があります。通常の試験はCOMM0009と呼ばれ、この試験で『COMM0004の中』(上・中・下がある)という結果が、BMSとインテリアデザインプログラムの入学基準です。ABPプログラムなら、『COMM0003の上』という結果が入学の基準です。
しかし、このCOMM0009試験で『COMM0005の上』という成績を取っても、本科の英語要求基準を満たすわけではないのです。他にも様々な試験がありますが、例えばCOMM0015と呼ばれる試験があり、これは本科の申し込みをした生徒で英語の入学基準に満たない生徒が受けるものです。」
−では、COMM0005というレベルのクラスを終えたら、どうなるのですか。
「COMM0005レベルを終え、その成績が良ければ、本科の英語力要求基準を満たします。しかし注意してほしいのは、先ほど言ったように、学力試験の結果でCOMM0005レベルと判定されたら、それはCOMM0005の科目を取らなくてはいけないという意味で、本科に入学する資格が与えられるわけではないのです。」
−BCITの学位は大学のものと同じですか。
「私の中では、同じです。例えばAccountingの学位プログラムに入学するには、金融マネジメントディプロマ(2年・フルタイム)もしくはそれと同等の知識が必要なのです。高校からBCITに直には入れません。BCITの学位プログラムに入るためには、何らかの学歴が必要なのです。」
−卒業後、留学生に労働許可が下りるのは本科だけですか。
「本科プログラムは、就業経験が卒業のために必要だから、学科を取りながら就業経験を得ることができます。しかしBMSの場合、プログラムを終えてから90日以内に就業先を見つければ労働許可が下ります。しかも、その労働はプラクティカムではなく、賃金を得られます。」
−BMSを卒業しただけでも、労働許可が下りるチャンスがあるのですか。
「ええ、8ヶ月のプログラムだから、8ヶ月の労働許可が下ります。仕事を探すかどうかは生徒次第ですが、もし卒業後90日以内に見つけられれば働くことができます。過去に仕事を得た生徒達は、一般的に何かしら学んだことに関連していたり、何かしらのビジネスに関連する仕事を見つけます。」
−どれくらいの割合の生徒が仕事を探すのでしょう。
「仕事を探す生徒の割合はとても低いです。というのも、本科のDiplomaプログラムをなるべく早く終えるために、勉強を続けたい生徒が多いからです。例えば、今BMSの生徒が8ヶ月間の仕事を見つけたら、2004年に始まるブリッジプログラム(本科準備コース)が取れない。そうすると本科の卒業が1年遅れるということになります。」
−ブリッジプログラムがあるのですね。それはパンフレットには載っていませんが。
「あまり多くの情報で混乱させたくないので、生徒がBCITに来る前は手短に説明し、実際にプログラムを始めてから、詳細を案内しています。なぜなら入学に必要な条件などの情報は毎年変わりますし、各プログラムによって入学基準が違い、その基準自体も変わるのです。」
★毎週土曜日にスポーツ系のアクティビティがあります。
(Balさん:スチューデントサービスと事務手続きを担当。)
−どんなお仕事をされていますか。
「学生からの最終申し込み手続きを担当しています。それから、BCITと正式に契約を結んでいる留学エージェントを管理しています。あとは、アクティビティとスチューデントサービスも担当しています。昨日、「MIX&Mingle」というパーティを開催しました。このパーティの目的は、BCITのキャンパスでの留学生の存在をアピールすると同時に、多様な文化を祝うというもので、いろいろな国の食べ物や、タンゴダンサーや伝統的な中国式毛筆といったエンターテイメントがあり、エスニック音楽も楽しみました。
その他、毎週土曜日には留学生のために、さまざまなスポーツアクティビティを設けています。バスケットボール、バドミントン、バレーボール、サッカー、ロッククライミングなど、いろいろなインドアスポーツを楽しむことが出来ます。」
<取材後記>
BCITは、BC州では大学と同列に信頼を得ています。大学と違う点は、「就業のためのスキルを学ぶ」ことにより重点を置いている点。卒業してすぐ仕事に就けるように、内容は実践的なものを取り入れるという指導方針を貫いています。この指導方針のおかげで、BCITの卒業生は産業界から引く手あまたです。
BCITの英語クラスは、テクニカルコミュニケーション(COMM)と呼ばれ、試験・クラス・レベルが全てこのCOMM+番号で呼ばれるため、最初はややこしく感じられます。そこでHarbさんは、生徒一人一人の目標と希望に沿うようアドバイスをする努力をされています。大学準備などといったプログラム名称は一切使われてはいないものの、英語の授業は本科入学を見据えて筆記に力を入れているのが特徴で、会話に力を入れている学校とは対照的です。
ABP、BMSもしくはインテリアデザインのサーティフィケイトコースを終えた後、単位が本科に移動できるので、ビジネスかインテリアで本科進学を目指す方の導入コースとして適しています。また、カナダで学位は要らないが就業経験を得たい、という方には、留学生プログラム卒業後、英語を使ってカナダで働く許可が得られます。通常留学生の実習は賃金はもらえませんが、この場合は賃金が払われるのが大きな特徴です。
レポート Jpcanada.com取材班(kiri)
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