2003.03.07
VFS, Vancouver Film School
『北米屈指の映画製作とメディアの学校で、自分の夢に挑戦』
米国でもよく知られた映画製作スクールがバンクーバーにあります。プログラムは脚本、芝居からメディアまで様々。共通しているのは、1年という短期間で密度の濃い授業内容を提供していることです。今年から始まる新しいプログラムについても取材して来ました。
★海外で何かをやるのがちっぽけな夢で、しかも自分のやりたいことをやっている。
(Ryujiさん:生徒/
Interactive Mediaのプログラミングを専攻中。) (Madokaさん:TA/
2001年に卒業して、VFSの教師補助をしています。当時は今みたいに専攻がなかったそう。)
―日本では何をしていらっしゃいましたか。
R:「メカニカル・エンジニアでした。大きな会社ではないですが、2DのCADを使って、自動車部品の設計、開発をしていました。3Dはやってないです。今はプログラミングを専攻しています。興味があったのが第一ですが、これから役に立ちそうだと思いました。」
―日本にもプログラミングの学校はあるとおもうのですが、あえてカナダの学校に来たのは?
「海外で何かをやるのがちっぽけな夢で、しかも自分のやりたいことをやっている、一石二鳥です。」
―なぜこの学校に入学を決めたのですか。
「日本でこの学校のことは知っていましたので、この学校に入りたくて来たとも言えます。日本では小さい記事で扱われていましたが、こちらに来て、有名な学校だと聞いて驚きました。ESLの学校に通っているときメールを送ってから、直接この学校に来て、バックグラウンドもないし英語も来たばっかりでできないんだけど、と相談したら、最初はVCCの準備クラスを勧められたけれど、丁度そのクラスが定員に満たなくて開催されず、直接VFSに入学しました。」
―英語の面ではどうでした?
「実はそれが一番のネックでした。カナダに来て、ESL4ヶ月目で入学したのですが、そのときはまだMadokaさんもいなくて、最初の2ヶ月間は死んでました(笑)。丁度ワールドカップが始まったころで、周りはみな盛り上がっているのに自分ひとりだけ落ち込んでいるといった感じで。ただ、8−9ヶ月目になってくると、慣れるな、と思いました。Madokaさんにも教えてもらえるし、友達も増えてきました。英語に関しては、なんとかなるな、という勇気がつきました。しゃべれないにしても伝えようという気持ちを持つことが大事だと思います。」
M:「留学生も多いし、先生方もESLには慣れているようです。一般的に、言語に関しては(許容の)幅が広いと思うんです。以前とはすこし変わってきました。英語の学校ではないので、ドキュメンテーション(企画書)も留学生はアイデアができていれば大目に見てくれるところがあります。日本語だと書けることも、英語では難しいですからね。どこで仕事を探すかというのが大事だし、皆仕事を探すために来ているわけではなく、帰国して就職しますよね。」
―クラスはどんな感じですか?
R:「仲良くなってきましたよ(笑)。初めはやっぱりESLとは違うな、と感じました。周りはカナダ人だし、でもESLと違って友達を作りに学校に来ているわけではないんですよね。プライベートで仕事を持っていて忙しい人もいます。」
―学校には残って作業をすることが多いんですか。
「いつも残っています。家に帰ってもすることがないんで(笑)。家にパソコンないですし。でも学校が24時間空いているわけだから、(課題ができなくても)言い訳ができないですね(笑)。」
★生徒達は、一日平均14−20時間を作業に費やします。
(Janetさん:Manager,
external promotions/メキシコに引き続き、東京での学校説明会に参加予定。)
−それでは校内の案内をお願いします。
「VFSのキャンパスは365日、24時間生徒がアクセスでき、いつでも来て作業をすることができます。高価な機材があるため、生徒はセキュリティカードを使って出入りし、フルタイムのセキュリティガードがおります。VFSの授業はハンズオン、つまり実地の製作です。一年間、実際に製作することによって学び、作品を仕上げてから卒業します。とても実際的・生産的な環境の中で学ぶことによって、生徒達は卒業してすぐ働けます。生徒達は一日平均14−20時間を作業に費やします。努力していいものを作ればそれだけポートフォリオの完成度が高くなり、より良い仕事の機会が与えられます。世界中から集まった真剣で創造的な生徒達に共通しているのは、ここに自分を表現しにやってくる、ということです。表現方法はプログラムによって様々ですが、生徒がこの環境のなかで、スキルを得、周りに触発され、自分のストーリーを創造し、表現する、ということが共通して言えるでしょう。」
−シアター
「過去のマルチメディア、ニューメディアプログラムは現在、インタラクティブ・メディアに名前が変わっています。デジタルビデオ、デジタルオーディオ、2D&3Dグラフィックス、プログラミングなどを学び、1年後の卒業時にはDVD,CDROM,ウェブサイト、オンラインレジメ、プリントパッケージといった5つ以上のポートフォリオが完成しています。このシアターはこのプログラム専用に作られ、壁はやわらかく、とても音の質がいいですよ。クラスやレクチャーなど多目的にも使われ、時に就職先の会社やスタジオからゲストスピーカーを招いて、彼らが何を未来の社員に期待するか、具体的にどのようなポートフォリオを作ったらよいか、などを生徒と双方向にやり取りして、生徒はどんなことをその会社がやっているかなど、具体的に聞いたりする機会を設けています。」
「実は今年、新しいプログラムがいくつか始まります。一つはファウンデーションof
ビジュアルアート&デザイン、もう一つはブロードキャストメディアです。映画とTVのための脚本プログラムは、現在4ヶ月コースなのですが、9月から1年コースに延長されます。その他に、アクティングの一年コースを始める前にその基礎のための4ヶ月コースが設けられます。これも、芝居の基礎が全くない生徒を対象にしています。というのも、卒業時の質を高めたいからなんです。私達がこだわるのはいつでも、最終的な質の高さです。最新であるために、常に質を向上させる努力を惜しみません。15年間、学校が非常に良い評判を保ちつづけているのも、各業界のアドバイザーを学校に招いて、どのようにプログラムを最先端の状態に維持しつづけるかを導いてもらいます。」
−3Dスタジオに来て。
「最近ではVFSの3Dの卒業生が、Road of the Ringsでアカデミーアワードを受賞しました。2D、3Dアニメーションプログラムはどの国の生徒からも人気で、特に生徒の国籍の偏りはありません。VFSはこの分野で北米トップ3に入るほど名前が知られています。これは典型的なアニメのスタジオで、世界的に有名なスタジオからのチームにアドバイスをもらって作られました。そして彼らがプログラムを作ります。生徒のレベルを向上させる具体的なアドバイスをもらい、それを基にプログラムが作られます。そして卒業生はそれらのスタジオに就職することができるという、一連の流れが成功しています。多くの生徒は各プログラムから各国のフィルムフェスティバルにプロジェクトで作った作品を出品しています。外部の地域や産業がここで作られた生徒達の作品に価値を付加するのは素晴らしいことです。」
−教室を外側から見学。
「ここではSoftimage、XSI 、3DにはMAYAといった業界のスタンダードのソフトウエアを使っています。もし必要なら一晩で変えることも可能です。それが私立の強みです。公立校は細かいところを変更するのに時間がかかることがあり、結果、生徒達が最新の機材や技術を学べないのです。授業料が高めなのも、そういった最新の設備、カリキュラム、そして業界のプロの講師陣をそろえている為で、この3つは生徒が学校を選ぶときにとても重要なことだと思います。」
★学校と授業の風景
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コンピューターラボをロフトから見下ろす。この日の朝は前夜卒業式のパーティーがあったため生徒は誰もいませんでした。
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ロフトの上では個々のデスクをもつインストラクター達が作業をしていました。
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生徒とスタッフがもつIDとカードキー。これで24時間アクセスが可能。
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1階にあるウェブカフェ店内。ここがブロードキャストメディアの教室となる。
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ウェブカフェロフト。打ち合わせ中の方がいました。
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今回取材したメディアのビルと道をはさんで反対側に立つビルもVFSのもの。異なるプログラムが行われている。
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★課題が次から次へと課され、とても大変だけど、たくさんのことが学べる。
(Bunさん:TA/2001年4月のニューメディアプログラム卒業生。香港からの移民。)
―ここの卒業生ということですが、インタラクティブメディアプログラムはどうですか。
「1年ですごくたくさんのことを学べるよ。僕はこの学校に入学する前、Eメールアドレスも持っていなかった。12年前、DJを香港で少しやったくらいしか、この分野での経験がなかったんだ。自分がこのプログラムの何に興味があるかさえ、よくわからなかった。このプログラムはものすごくたくさんのものが詰まっているしね。初めは何をやりたいか、わからなかったよ。でも学ぶにつれて、興味が出てきたんだ。」
―TAということですが、クラス内で中国語を使われることはあるのですか?
「場合によるね。もし中国語を話す生徒が英語で行き詰まっていたら、中国語で助けるでしょうね。授業では英語がどれだけできるかを競うわけではないからね。実際留学生の割合が高く、60−70%が海外からの生徒です。地元の生徒は30%くらい。それから時々米国からも生徒が来ます。自分は、英語は新しい知識を学んでいくのには問題なかったけど、グループプロジェクトがあって、その際自分の頭の中にあるアイデアを仲間に伝えるのが大変だったな。」
(Cherryさん:TA/インタラクティブメディア2001年卒業生。10年前に香港から移民してきた。)
―インタラクティブメディアのクラスはどうでしたか。
「私の人生を変えたわね。だから、この学校にとても忠誠心があるの。この学校で学び始めて、ラボで一日中夜中まで過ごすうち、同じ生徒がいつもいて、つながりができるのよ。そしてしゃべったり、もしだれかの助けが必要だったら経験のある生徒に聞けばとても気持ちよく教えてくれるの。だから、私は楽しんだわね。でも、課題が次から次へと課され、それをやらないと良い成績が取れないから、とても大変よ。私のクラスの半分は、留学生だったの。卒業後、みな国に帰ったけれど、まだ連絡をとりあっているわ。お互いの国の文化を知ることができて、とても面白かったわ。」
―結婚していたら、時間的に大変でしょうね。
「以前にも問い合わせをもらったことがあり、その時私が言ったことは、"You
have to prepare"。自分はもちろん家族にも十分な時間をあげて、理解してもらうこと。家族を学校に連れてきて、皆がどれほど一生懸命作業をしているかを見せることも勧めます。結婚している多くの人がこれをやり遂げています。私のクラスメイトも結婚していたし。でも準備を十分しなければ、配偶者にとってもとても難しいでしょうね。家にコンピューターがあれば家でも作業が可能ですけどね。」
★生放送と録画を組み合わせた番組をここから発信します。
(Ted先生:Instructor of Broadcast Madia
Program)
―ブロードキャストメディアプログラムについて教えてください。
「このプログラムはテレビや放送関連の製作を学びたい人のための1年間のプログラムです。マルチスキルを持つ放送業界のプロを育てます。マルチスキルとは、1つ目はオペレーション、つまりカメラ、編集など技術的な面、そして2つ目はマネジメントスキル、3つ目はパフォーマンス。司会者、レポーター、ナレーターなどです。前半は各エリアの基礎を満遍なく学び、後半は専攻を決めて、それを中心に学びます。専攻ばかりでなく、他の分野も織り交ぜて学びます。生徒達に総合的な技術を学んでもらいたいからです。伝統的にカメラマンならカメラの技術だけがあれば良い時代もありましたが、現在は構成、レポート、撮影、演出など全てこなす人材が北米だけでなく世界中で活躍しています。実際にウェブカフェにTVスタジオを設置し、生放送をします。放送権を持つ地元のケーブル会社と提携しました。彼らはシグナルを送り、ここからは番組を提供します。1日1時間程度の生放送と録画を組み合わせた番組になるでしょう。後半はまた、専門のデモリールやポートフォリオを作っていきます。後半は講義より実際に製作をします。」
―テレビ製作は日常的で幅が広いから、映画製作より現実的な感じがしますね。
「幅が広いというのはその通り。ウェブ(インターネット)でも放送される予定だから、日本から私達がここでどんな番組を製作しているか、インターネット上で見ることができるでしょう。日本の放送技術は進んでいるから、日本人の生徒さんがこのプログラムを取り、帰国してから放送会社等で、学んだ技術を生かせるのではないかな。」
<取材後記>
とてもドラマティックな印象を受けたVFS。近未来的な校内を歩きながら、誰もが知っている映画の製作に活躍している人々もここで学んでいたのだと思うと、単純に気持ちがはずみます。生徒や卒業生の作品は数々のフィルムフェスティバルに出品され、上映され、賞の候補に上がったり、受賞したりしています。大きな製作会社で才能を発揮している人もいます。そういった最新の情報と詳細は公式に発信され、学校の評判を支えています。生徒や卒業生と産業界を相互に結ぶ大量の情報網がすでに完備され、それを支えるアドミニストレーションのバランスが取れているからこそ可能なことだと思います。
私の人生を変えた、との言葉に代表されるように、取材した皆さんはかなりの感慨と思い入れをもってVFS時代を語ります。というのも、生徒達は一日14−20時間、寝る間を惜しんで作業をするとのこと。それほどまでに過密な日々を晴れて卒業した後は、就職してからも現場のスピード感に戸惑うことなく、自信と誇りを持って仕事ができるのでしょう。これは逆に、1年という短い期間で2年間分の内容を学べるということだと思います。VFSの卒業生で、現在ジョージ・ルーカスの作品でSFXを手がけている人物のインタビューの中でも、彼がVFSを選んだ理由の一つとして「現場に入る前に1年以上も学校に行きたくなかったんだ」と言っています。
英語が第2外国語であることの不利な点について、皆さんに伺いましたが、以外にも、インストラクターは留学生に対する理解があり、最近では特に人気のメディアプログラムに卒業生のインストラクター補助(TA)が導入され、学校は入学前のインタビューで相談に応じてくれるとのことで、英語力よりむしろ重要なのは、自分がどれだけ夢中になれるかということではないでしょうか。一度ここで勉強してみたい、と思わせてくれる学校です。
レポート Jpcanada.com取材班(kiri)
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